Little AngelPretty devil ~ルイヒル年の差パラレル

    “ひとりで出来るもん だなんて…”
 


まだまだ昼間の陽気は結構な暑さだったりするものの。
朝晩の涼しさは格別なそれとなりつつあるし、
気がつきゃ、木陰を吹き抜ける風が随分と涼しかったりし。
空が淡色になったか、
いやいや透き通った分、高さを増して遠くなってもいて。
ああ秋なんだなぁと、あちこちで感じ入ることが出来る。

 「秋と言えば。」
 「秋リーグ開催!」

それでなくたって“スポーツの秋”だ。
国体も催されるし、
野球やサッカーなんていう通年スポーツが終盤戦を迎えるのも秋ならば。
事実上 この時期から始まるのが、
ラグビーやアメフトの、各レベルそれぞれの本戦というやつで。

 「つか、ラグビーの方の日程はよく知らねぇんだけどもよ。」

アメフトは、アメリカのNFLが始まるのへ合わせたものか、
高校が全国決戦にあたる“クリスマス・ボウル”へ続く秋大会が始まるし、
大学もめいめいのリーグで順位を決める星取り戦が始まるし。

 「今年も目標は、上との入れ替え戦への参戦だかんな♪」

賊徒学園の大学部に籍を置く“フリル・ド・リザード”は、
葉柱の兄・斗影が空中分解という形での解散の憂き目に沈まぬよう、
死守しといてくれた3部から出発した身。
何せ、他のガッコの部と違い、
斗影への忠誠心半分で構成されてるチームだったので、
推進力が居なくなった途端、
不良のたまり場と化したのが高校時代の“カメレオンズ”だったという前歴がある。
年の差の関係で、
そんな兄が卒業するのとまんま入れ替わるように進学した葉柱は、
そんなことだろうという予測もあったか、
当初、自分の素性を隠したままにて学園内をあらかた締め上げ、
アメフト部へも自力で楔を打ち込んでから、自分が何物かを明かしたため。
俗に“七光り”なぞという身内の威光のお陰様ではない、
本人こそが恐ろしい存在なのだという裏書つきで、
確たる地位を手に入れたのだが。
そちらは無名だったからこそ出来たことであり、
高校アメフトで結構な暴れようをしたその上、
彼らに追い立てられたクチの上級生も居よう“大学”へは、
さすがにその手も使えぬからと。
弟想いの兄上、
彼からは最下級にあたる面子がそのまま、
高校時代同様、弟との再びの確執生まぬかと、
随分用心しておいでだったとか。

 “まあ、それは杞憂に終わった訳だが。”

先輩さんたちとて、そうそうお馬鹿揃いじゃあない。
本当はアメフトが好きだったクチのお歴々。
同学年の皆が、年下に顎で使われてたまるかなんて、
そんな意地を張って次々に退部したのへ、つい付き合ったが、
残りの高校生活はあまりに詰まらぬものだった。
自分たちという上級生が一人も居残らないまま発進した、
新生カメレオンズは、
春大会こそ暴力沙汰で途中失格の身となったが、
それ以降の目覚ましい活躍っぷりはどうだったか。
優勝の座にこそ、手が届かずに終わったが、
好きなことを思う存分と、
そりゃあ充実した3年を送った彼らが心底うらやましかった、
先輩諸氏若干。
きっちり居残っての、
こっちが上がって来るのを待っててくださったので。
実に順調なスタートを切れた、昨年の初年度だったりし。

 「今年も目指すぞ、ランク・アップ!」

腰に手を当て、もう片手は頭上へ。
凛々しき雄叫びをまずは一喝し。
それからそれから、
何で1個ずつしか上がれねぇんだろな、うざってぇ、
今のウチなら1部の中堅と変わんねぇのによ…なぁんて。
ここまでのずっとをアメフトのお話で埋めてくださったは、
カナリアの羽色もかくやという軽やかな色合いの金髪に、
少女と見まごう色白華奢な風貌の、
そりゃあ愛らしい小学生の坊やであり。

 「…だ~か~ら。
  普通の小学生みたいに、
  運動会だの遠足だのって文言は、
  どうして出て来ないのかなぁ? 妖一くん。」

それでなくとも今年は“シルバーウィーク”なんてものまであって、
ドライブやハイキング、連泊で遠出なんてな話をあちこちで聞きもする。

 「言っとくが、車での遠出は道が混み合うぞ?」

ETC割引と、
エコカー減税で車買い替えたクチの初旅行とが、
見事にガチンコするらしいから、
高速道路が役を果たさないほど混むんじゃないかって、
あっちこっちで言ってるしサ…なんて、
大人ばりに世情に明るい小学生だから、
ペロっと軽々 論を尽くせるところ。
しっかりしているとか、
偉いわねぇ賢いわねぇなんてな言いようで済むのは、
案外と他所様の子供だった場合だけなようで。

 「妖一~~~。」
 「何だよ、もう。」

かわいい一人息子への、背後からの羽交い締め。
色白なのも髪の色合いが淡いのも、
日本人離れした端正な面差しも。
このお父さん譲りの外見だったのねと、
やっと最近になってご近所様にも認可いただいた、
帰って来たばっかな片親さん。
今まで甘えられなかった分、いっぱいいっぱい甘えなさいね…が、
言われなくとも発動するよなお年ごろに戻って来れればよかったのだが、

「ちゃんと昨日は、約束通り、
 一輪車の練習付き合ってもらったじゃんか。」
「父ちゃんは、
 せっかくの連休なんだからもっと遊ぼうって言ってんだ。」
「遊ぶのなんていつでも出来んじゃんかよ。」
「そう言って、
 陽が暮れるまで帰って来ねぇのは何処のどいつだ。」

よくよく聞けば聞くほどに、
どっちが大人か判らない内容の舌戦に発展してもおり。

 「言っとくが、夜遊びまではしてねぇぞ。」
 「誰がさせるか、そんな不良行為をよ。」

大体お前、まだ小学生だって自覚あんのか。
父ちゃんには言われたくねぇな、
俺がここまでのしっかりもんになったのは、
帰って来なかった父ちゃんのお陰様なんだからよ。
だから今から甘やかしてやろうじゃねぇかっつってんだろ。
要らねぇよっ!

 「相変わらずだねぇ。」
 「ホントですねぇ。」

お迎えを待ってでもいるものか、玄関先まで出て来た坊やを追いかけて、
外見はそりゃあもう、
時間差で別々に逢っていても“ああ親子さんだ”と判るほど、
玲瓏美麗で綺羅綺羅しいところが瓜二つなお父さん。
だからだから、
そりゃあもうもう、すこぶるつきに“いい男vv”だっていうのにね。
そんな美丈夫が構いつけるのを、
ああもう煩いなぁと言わんばかり、
微妙に邪険にされている辺り……。
罰当たりなことをする坊ちゃんであることよ。
(苦笑)
ちょっぴり過激な親子漫才もどき、
おもしろいからこっちに気がつくまで見てましょうなんて、
門前から少し離れた辺りで立ち止まり、
興味津々と視線を投げやってた“ギャラリ”に気づいたのも、
坊やの方が先であり、

 「…あ、七郎兄ちゃん!」
 「え? …あ、こらっ。」

もはや“おんぶお化け”と化しかかってたうら若きお父様の注意を逸らし、
腕が緩んだ隙を衝いて、
素早くダッと駆け出した妖一坊や。

「ヨーイチっ。」
「悪りぃな、くう。俺、これから出掛けんだ。」

来客たちの前をも横切っての駆け抜けて、
あっと言う間に通りを去ってゆくすばしっこさよ。
そして、まんまと逃げられた側はというと、

 「何の用だ、七郎。
  店は休みだろに、マスターまで連れて来て。」
 「そんな怖い顔したら、くうが泣くからやめてください。」

取り逃がす切っ掛けになってしまった来客たちへと、
しっかり八つ当たりするところがやっぱり大人げなかったり。
(笑)
日頃からも“懐いてくれない”との泣き言、
さんざん聞いているこちら様なので、

 「甘えた盛りのかわいい盛りに放っぽり出してた報いですよ。」
 「うむ。」
 「む~~~。」

壮年のマスターからまで頷かれるよなお言いよう、
びしりと突きつける“はとこ”殿ではあったれど。
そやって、しっかりと言うことだけは言うけれど、
けどでも、

 「くうがね、
  店が休みになるとヨウイチロおじちゃんに逢えなくてつまんないって。」

それで連れて来たんですよと、
腕の中へと抱えてらした愛らしい和子を、
よいよいよいとあやすように揺らして見せる。
こちらさんもやっぱり金髪に透き通った瞳の幼子で、
不思議なDNAで結ばれた、ご親戚同士という間柄。
どうやら、こんな騒ぎを見越しての
“陣中見舞い”に来てくれたらしくって。


  ―― 何だったらシルバーウィークの間、
     ずっと構って差し上げましょうか?

     いや、そうなると
     今度はマスターが収まらなかろうから遠慮する。


ややこしい男系一族の謎は、相変わらずになかなか尽きねど、
どうか仲良くお過ごしと、
秋の涼やかな風の中、萩の生け垣が揺れていた。



   ~Fine~ 09.09.20.


  *ややこしいネタですいません。
   ちょっと久々の、蛭魔さんチの父子戦争でございましたvv
   全然のまったく 小学生らしくない秋を満喫中の妖一くんが
   構ってくれないもんだからと、
   お父さんたら、
   茶房“もののふ”でくうちゃんに慰めてもらってるらしいです。

  *ところで、これ書いてて気がついたんですが、
   今時の小学校って、一輪車とかピアニカは必須なんでしょうか?
   (そういや、竹馬がはやった時期もありましたが。)
   自転車だって乗れない子はいるでしょうに、一輪車って…。
   あたしにゃ、逆上がり以上の鬼門になっただろうな、きっと。
   あと、ピアニカはハーモニカの代わりですか?
   確かにまあ、鍵盤で半音とか覚えられての一石二鳥かもですが、
   ハーモニカもあの音色が味があってよかったのにね。

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